ホーム記事ヒヤリハット・報告 > 3行の型と例文
ヒヤリハット

ヒヤリハットは3行でいい(例文50本)

結論から書きます。ヒヤリハットは、3行で十分です。
①いつ・どこで ②何があった ③どうした——これだけです。

原因を分析しなくていい。対策を考えなくていい。きれいに書かなくていい。清書もいりません。

この記事には、そのまま書き写して使える例文を、転倒・転落・移乗/誤薬・誤嚥・入浴/内出血・体制・伝わらなかったこと、と場面べつに並べました。自分の場面に近い1本を、時刻と名前だけ入れ替えて写してください。

最終更新:2026年8月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. ヒヤリハットは、反省文ではありません
  2. 3行の型 ——これ以上は書かなくていい
  3. 例文① 転倒・転落・移乗
  4. 例文② 誤薬・誤嚥・入浴
  5. 例文③ 内出血・体制・伝わらなかったこと
  6. 書きにくいことこそ、価値があります
  7. まとめ

ヒヤリハットは、反省文ではありません

「何をどう書けばいいか分からない」——そう感じている方は、たぶん書く量を多く見積もりすぎています。 ヒヤリハットは、気づいたことを3行書いて、箱に入れる。それだけの紙です。

そもそも、どこまでがヒヤリハットなのか。もとにした資料では、こう整理しています。

こういうもの
もう少しで事故になった薬を渡す直前に、名前を読んで気づいた/転びかけて、支えて止めた
やってしまったが、何も起きなかった薬を飲ませたあとに間違いに気づいたが、体調に変化がなかった
あぶないと感じた床が濡れていた/柵のすき間が広い気がした/ブレーキが効きにくかった
いつもと違ったいつも歩ける方が、今日はふらついていた/食事の時間が長くなった
対応できなかったひとりで移乗するしかなかった/呼びたかったが呼べなかった
分からなかったやり方が分からず、迷いながらやった/指示の意味が分からなかった

いちばん下の2つを、忘れないでください。
「ひとりでやるしかなかった」「分からないままやった」も、りっぱなヒヤリハットです。 これは職員の失敗ではなく、体制と教育の問題です。でも、書かれなければ、施設には見えません。書いてください。

「これは書くほどのことかな」と思ったら、それは書くべきことです

迷ったら、書く。書きすぎて困ることは、ありません。書かなくて困ることは、たくさんあります。

こんなときどうする
けががなかった書きます。けががないのがヒヤリハットです
自分のミスだった書きます。ミスを書ける職場が、事故の少ない職場です
誰も見ていなかった書きます。あなたしか知らないから、価値があります
他の人のことだった書きます。個人を責める書き方にせず、起きたことだけを書く
毎日起きていることだった書きます。「毎日起きている」ことこそ、いちばん大事な情報です
前にも同じことを出したまた書きます。回数が分かることに意味があります
もう直してしまった書きます。「直した」と書けば、それが対策の記録になります
忙しくて、いま書けない1行だけメモしておく。「14時 田中様 むせ2回」でも十分です
日本語で書けない丸をつけるだけの様式を使う。口で言って、書いてもらってもよい
言うと怒られそうそれを、そのまま書いてください。「言いにくかった」も情報です

ただし、次のものは紙を書く前に、口で報告してください。ヒヤリハットではなく「すぐ報告」するものです。

迷ったら、口で言ってから紙を書く。これがいちばん安全です。

3行の型 ——これ以上は書かなくていい

書き方の型は、この3つだけです。

書く例
① いつ・どこで8月25日 12:20 食堂 / 田中様
② 何があったみそ汁を飲んだあと、2回むせた
③ どうした食事を止めて、咳をしてもらった。落ち着いてから再開
+ 書けたら(任意)気づいたこと:とろみが ついていなかった

4つ目は「書けたら」でいいです。空欄でも、まったく問題ありません。 Chỉ cần 3 dòng: ①khi nào ở đâu ②chuyện gì ③đã làm gì. Không cần phân tích nguyên nhân.

「原因」「対策」「再発防止」の欄は、この紙には要りません。

それを考えるのは、カンファレンスの仕事です。書いた人が背負うものではありません。承認印の欄も要りません。ハンコが要ると、その場で書けなくなります。

ここまで短くて大丈夫です

〇 これで受け付けます

「12:20 しょくどう たなかさま みそしるで 2かい むせた とめて せきをしてもらった」

ひらがなだけでも、十分に伝わります。漢字は要りません。文章になっていなくても構いません。

✕ こう書かせようとすると、出なくなります

「【発生日時】【発生場所】【対象者】【発生状況】【原因分析】【再発防止策】【所属長確認】【看護主任確認】…」

欄が多いほど、出す枚数は減ります。この様式にすると、書ける職員が限られ、書ける人だけが書くようになります。

提出が増えなくて困っているリーダーの方へ。まず、紙のほうを疑ってください。

それでも書けない人がいたら。「口で言ってもらって、聞いた職員が書く」——これで、まったく構いません。 大事なのは情報が施設に届くことであって、本人が字を書くことではありません。

「事故報告書」と「ヒヤリハット」は、別のものです。事故報告書は、実際にけがや事故が起きたとき。24時間以内に、詳しく書きます。 ヒヤリハットは、起きなかったとき、気づいたとき。3行でいい。 この2つを同じ様式・同じ扱いにすると、ヒヤリハットは出てこなくなります。紙の色を変えるだけでも違います。

例文① 転倒・転落・移乗

ここからは、そのまま書き写して使える例文です。全部「書いていい」ものです。 時刻・場所・利用者さんを、自分の場面に入れ替えてください。

転倒

「10:20 廊下で 田中様がふらついた。腕を支えて 転ばずにすんだ。」
「15:00 食堂の床が濡れていた。すぐ拭いた。」
「6:30 佐藤様が スリッパのかかとを踏んで歩いていた。声をかけた。」
「21:00 鈴木様の ナースコールが 手の届かないところにあった。位置を直した。」
「17:00 山田様が いつもより ふらつく。夕方だけ 多い気がする。」

転落

「14:00 オムツ交換のあと ベッドを下げ忘れていたことに気づいた。すぐ下げた。」
「3:00 高橋様が ベッドの端に座っていた。声をかけて 戻っていただいた。」
「11:00 柵と柵の間の すき間が 広い気がした。手が入る。」
「9:30 車いすから 前にずり落ちそうになっていた。座り直した。」
「20:00 床のマットが めくれていた。直した。」

移乗

「10:00 移乗のとき 足が絡まって 崩れそうになった。支えて座らせた。」
「16:00 ひとりで移乗するしかなかった。呼びたかったが 誰もいなかった。」
「8:00 ブレーキが効きにくかった。タイヤの空気が少ないかもしれない。」
「13:00 フットサポートを外し忘れて すねに当たりそうになった。」
「12:00 移乗のあと 腰が痛くなった。リーダーに言った。」
「7:00 今日の伊藤様は いつもより力が入らない。2人でやった。」

この長さで十分です。「原因」も「対策」も書いていません。それでいいのです。
これが30枚たまると、施設は「夕方の廊下」「ベッドの下げ忘れ」「ブレーキ」という具体的な対策が打てます。
1枚では何も分かりません。だから、たくさん出してください。

例文② 誤薬・誤嚥・入浴

誤薬

「8:10 渡す直前に 名前を読んで気づいた。田辺様の薬を 田中様に渡すところだった。トレイで隣だった。」
「12:00 一包化の袋に 名前が印字されていなかった。」
「7:30 配薬中に ナースコールが鳴って中断した。最初からやり直した。」
「18:00 飲んだか どうか 分からなくなった。看護師に報告した。」
「9:00 薬が口の中に残っていた。取り出した。」
「10:00 中止になった薬が まだセットに入っていた。抜いた。」

誤嚥

「12:20 みそ汁で 2回むせた。食事を中断した。落ち着いてから再開。」
「12:40 食後の声が ゴロゴロしていた。もう一度飲み込んでもらった。」
「18:00 とろみの濃さが 職員によって違う気がする。」
「11:50 眠そうだったが 時間だったので 食べさせた。あとで こわくなった。」
「13:00 食事の時間が いつもより15分長い。
「8:00 足が フットサポートに乗ったまま 食べていた。」

入浴

「14:00 タオルを取りに行って 30秒 目を離した。次からは 先に全部そろえる。」
「15:00 脱衣所が寒かった。暖房を入れていなかった。」
「10:00 お湯が 急に熱くなった。ほかで水を使ったからかもしれない。」
「16:00 浴室の すべり止めマットが ずれていた。」
「11:00 入浴後に ふらついた。座って休んでもらった。」

「眠そうだったが、時間だったので食べさせた」——この1行が、いちばん価値があります。
書きにくいことです。でも、これが5枚たまれば、施設は「覚醒していないときの中止基準」を作れます。
言いにくいことを書いた人を、絶対に責めないでください。その1枚が、次の誤嚥性肺炎を防ぎます。

例文③ 内出血・体制・伝わらなかったこと

内出血・皮ふ

「10:00 入浴のとき 右のすねに 新しいあざ があった。原因は分からない。」
「9:00 同じ場所に 3回目のあざ。車いすの何かが当たっているかもしれない。」
「15:00 おしりに 赤みがあった。押しても消えない。看護師に報告した。」
「11:00 装具のあとが 赤く残っていた。外して30分見た。」
「8:00 車いすの角に カバーがない。手でさわると 角が立っている。」

なお、あざそのものの記録は、ヒヤリハットとは別に、大きさ・色・形・部位まで残しておくと、あとで比べられます (あざの記録の書き方)。

体制・人手のこと ★これも書いてください

「16:00 ひとりで 3人を同時に 食事介助した。ペースが速くなった。」
「3:00 ナースコールが2つ同時に鳴った。どちらに行くか迷った。」
「10:00 2人でやりたかったが、呼べなかった。ひとりでやった。」
「14:00 リフトを使いたかったが、他のフロアにあった。
「19:00 休憩が取れなかった。夕方から集中できていない。」

体制のことを書くのは、文句ではありません。
「ひとりで3人を介助した」という紙が10枚たまること——それだけが、人員配置を変える力になります。
口で言っただけでは残りません。紙に書いてください。それが、あなたと利用者さんを守ります。 Viết về vấn đề nhân lực KHÔNG phải là than phiền. Đó là căn cứ duy nhất để thay đổi.

伝わらなかったこと・分からなかったこと

「9:00 申し送りが速くて 聞き取れなかった。もう一度聞けなかった。」
「10:00 指示の意味が 分からないまま やった。
「13:00 記録に 何を書けばいいか 分からなかった。
「11:00 薬の変更を 知らなかった。配る前に気づいた。」
「15:00 この方の食形態が 分からなかった。食札を見て確認した。」
「8:00 やっていいか 分からなかったが、聞けずに やってしまった。

これは、外国人職員だけの話ではありません。
新人も、他フロアから応援に来た職員も、久しぶりの夜勤の職員も、同じです。
「分からなかった」を書けることが、この施設の本当の強さになります。

書きにくいことこそ、価値があります

出しにくい1枚ほど、施設を変えます。

当たりさわりのない紙が100枚あっても、何も変わりません。「言いにくかったこと」が1枚出ると、そこから変わります。

こんなこと書き方の例
自分がやってしまった「私が 田中様に 田辺様の薬を渡しかけた。名前を読んで気づいた。」
「私が」と書いてよいです。責められません
ひとりでやるしかなかった「2人でやりたかったが、呼べなかった。ひとりでやった。」
急いでしまった「時間がなくて、食事介助が速くなった。」
言われたとおりにできなかった「背抜きをする時間がなかった。」
ほかの職員のやり方が気になる個人名を書かず、起きたことだけ。
「わきを持って移乗しているのを見た。あざができないか心配。」
利用者さんに強く言ってしまった「拒否があって、つい強い口調になった。」
これを書ける職場は、虐待が起きにくい職場です
自分の体調が悪い「腰が痛くて、いつもどおりの介助ができなかった。」
やり方に納得できない「この方法は危ないと思うが、そう決まっているのでやっている。」

いちばん下の2つを受け取ったリーダーへ。
これは反抗ではありません。職員が、危険に気づいているという合図です。
まず「教えてくれてありがとう」と言ってください。そして、その方法を一度チームで見直してください。 納得できない方法を続けさせると、必ずどこかで手を抜かれます。

個人を責める書き方に、しないために

✕ 人を書く

「〇〇さんが、確認していなかった」
「新人が わきを持っていた」
「夜勤の人が 柵を戻していなかった」

→ これが1枚出ると、その人は次から出しません。そして職場の空気が悪くなります。

〇 起きたことを書く

「柵が戻っていなかった」
「わきを持つ移乗を見た」
「確認しないまま配薬されていた」

→ 誰がやったかは、対策に必要ありません。必要なのは「何が起きたか」だけです。

「主語を書かない」だけで、責める紙になりません。 誰がやったかを知りたくなるのは自然なことですが、それを知っても対策は変わりません。 変わるのは、その人が二度と出さなくなることだけです。

受け取る側の一言が、次の1件を決めます

✕ こう言われると、出なくなる

「なんで気づかなかったの」/「これ、あなたがやったの?」/「で、対策は?」/「こんなことまで書かなくていい」/「字が読めないよ」/「あとでちゃんと書き直して」

〇 こう言われると、また出す

「書いてくれて、ありがとう」/「気づいてくれて助かりました」/「これ、今日直しておきます」/「ほかにもあったら、また教えて」/「短くて大丈夫だよ」/「言いにくかったよね。言ってくれてよかった」

リーダーの言葉ひとつで、その人が1年間に出す枚数が変わります。 「ありがとう」は、いちばん安い対策です。 Cảm ơn bạn đã viết.

そして、いちばん大事なのは出した人に、結果を返すことです。 「〇〇のヒヤリハットが多かったので、△△を変えました」と掲示する。返さないと、次の月から出てこなくなります。

外国人職員が書かないのは、日本語力の問題ではありません。 「怒られるかもしれない」「自分のせいにされるかもしれない」——これは日本人職員が書かない理由と、まったく同じです。 そこに日本語の負担が上乗せされているだけです。 Nhân viên nước ngoài không viết KHÔNG phải vì tiếng Nhật. Là vì sợ bị mắng — giống hệt nhân viên Nhật.

くわしくは 外国人職員がヒヤリハットを書かないのは、日本語力の問題ではない をご覧ください。

まとめ

3行の様式を、そのまま印刷して使えます

①いつ・どこで ②何があった ③どうした +書けたら、の3行版。日本語で文章を書くのが不安な方のための丸をつけるだけの版もあります。どちらも記入例つきで、原因・対策・承認印の欄はありません。いずれも一例です。項目は施設に合わせて書き換えてお使いください。

様式をダウンロード → 困りごとから調べる

根拠にした資料

個人の経験ではなく、公開している資料をもとに整理しています。
  • 当研究所『介護事故防止 実務マニュアル』第8章「ヒヤリハット」 ——この記事の例文は、同章の「場面べつ『これも書いていいの?』」から引用しています
  • 同 第9章「報告」 ——事故報告書との違いについて
  • 同 第10章 ——全文を公開しています
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 施設によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 紹介した様式は一例です。そのまま使わなければならない、ということではありません。項目は施設の実情に合わせて入れ替え、使いながら育ててください。 事故報告・行政への報告の様式や基準は、所属施設の規程と自治体の定めに従ってください。 実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。制度・基準は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。