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日本の介護現場で、特に注意すること — 第10章 全文公開

実務マニュアル第10章を、本文をそのまま公開しています。抜粋ではありません。章末の用語対訳表とフレーズ集まで、すべて載せました。

この章は、外国人職員のための章ではありません。日本人職員と、いっしょに読む章です。 どの節も、両側から書いてあります。

「言わなくても分かる」は、通じません。そして「分かりません」と言えないのは、言う人の問題ではなく、言える空気がないからです。

Những điều cần đặc biệt lưu ý tại cơ sở chăm sóc ở Nhật Bản

最終更新:2026年8月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. この章を読む前に、ひとつだけ
  2. この章の全体像 — 5つの順番で進みます
  3. ① リスクの地図 — 困りごとの地図
  4. 「当たり前」が違うところ — 10の場面
  5. ② 困ったときの動き方
  6. 相談できるところ — 施設の中と、外
  7. ③ 報連相・申し送り・時間
  8. 記録は、法的な文書です
  9. 個人情報とSNS — 仕事を失う人がいちばん多いところ
  10. 身体拘束にあたる11の行為
  11. 虐待の5つの種類と、通報のしかた
  12. ご家族への対応
  13. 宗教・食習慣・服装
  14. 利用者・ご家族からの差別的な言動
  15. ④ 「わかりました」問題 — この章の中心
  16. 教え方の4ステップと、面談の記録
  17. ⑤ 受け入れる側の20項目点検
  18. 定着のためのサイクルと、カンファレンスでの使い方
  19. この章のまとめ
  20. 章末|用語対訳表
  21. 章末|フレーズ集

この章を読む前に、ひとつだけ

この章に書いてあることを守れないと、法律違反になったり、仕事を失ったりするものが含まれます。 こわがらせたいのではありません。知らないまま違反してしまうことを、防ぎたいのです。

そして、それを教えるのは施設の責任です。教わっていないことは、あなたの責任ではありません。 Nếu chưa được hướng dẫn, đó không phải lỗi của bạn. Trách nhiệm hướng dẫn thuộc về cơ sở.

この章の全体像 — 5つの順番で進みます

この5つの順番は、マニュアルの第1章から第10章まで、すべて同じ形にしてあります。 リスクの地図から始めて、最後に「点検」で終わります。

1 リスクの地図 — 「言えない困りごと」を見つける 事故は、言えなかったことから起きます。見えていない部分がどこかを知ります。 2 フローチャート — 困ったときの動き方 誰に、どう聞くか。施設の中と、外の相談先。 3 場面べつ — 知らないと違反になること 報連相・記録・身体拘束・虐待通報・個人情報・家族対応・宗教・差別への対応。 4 「わかりました」問題 — この章の中心 分からないのに頷いてしまう。これを両側から解きます。 5 点検とふり返り — 施設の側を点検する 職員を点検するのではなく、受け入れる側の体制を20項目で点検します。
図:第10章の進み方。①から⑤の順に読みます

① リスクの地図 — 困りごとの地図

事故は「分からなかったこと」ではなく、「分からないと言えなかったこと」から起きます。 だからまず、言えていない困りごとがどこにあるかを、地図にします。

言葉のこと × 言えない ・申し送りが速すぎて分からない ・専門用語・略語・方言が分からない ・漢字が読めないが、聞けない ・電話の日本語が聞き取れない ・記録に何を書けばいいか分からない ・何度も聞くと迷惑だと思っている 文化・制度のこと × 言えない ・柵を4本にするのが違法だと知らない ・写真をSNSに載せてよいと思っている ・虐待を見たが、通報してよいか分からない ・礼拝・食事の配慮を言い出せない ・利用者から差別的なことを言われている ・体調が悪いが、休むと言えない 言葉のこと × 言える ・辞書アプリを使っている ・ふりがな付きの手順書がある ・「もう一度」と聞ける相手がいる 文化・制度のこと × 言える ・シフトの相談ができている ・食事の配慮を相談済み ・定期的な面談がある 言えない 言える 見えているのは下半分だけ。上半分は、誰にも見えていません。
図:困りごとの地図。上半分(赤)が、この章がなくそうとしているものです

下半分は、すでに相談できているので大きな事故になりません。危ないのは上半分—— 本人が困っているのに、周りが気づいていない部分です。

上半分を下半分に移すのは、本人の努力ではありません。

施設が「聞ける仕組み」を作るかどうかです。

「当たり前」が違うところ — 10の場面

どちらが正しいという話ではありません。違うことを、お互いが知っておくだけで事故は減ります。 日本の介護現場のやり方と、よくあるすれ違いを並べます。

場面日本の介護現場のやり方よくあるすれ違い
報告する量小さなことも全部報告する。「たぶん大丈夫」でも言う「これくらいで報告したら、能力がないと思われる」と考えて黙ってしまう
時間5分前行動。申し送りは開始時刻ちょうどに始まる時間の感覚が国によって違う。悪気なく遅れると、信頼を失う
記録書いていないことは「やっていない」とみなされる「ちゃんとやったのに書かなかった」が、事故のとき最も不利になる
断り方できないことは「できません」と早く言うほうが良い上司の指示を断るのは失礼だと思い、無理に引き受けて事故になる
質問質問する人は評価される。分からないまま進むほうが問題「質問=理解が悪い」と思われる文化圏がある
利用者への言葉敬語。呼び捨てや子ども扱いは心理的虐待にあたる親しみを込めたつもりの「ちゃん付け」「タメ口」が問題になる
体に触れること触れる前に必ず声をかける。無言で触らない急いでいると省略しがち。これも虐待とされることがある
写真施設内の写真は原則すべて禁止。個人のスマホで撮らない「思い出だから」「家族に見せたいから」で撮ると、解雇や刑事罰もありうる
安全のための固定ベルト・4点柵・つなぎ服は身体拘束。原則禁止「転ばせないため」の善意が、法律違反になる
休むこと体調が悪いときは休む。感染を持ち込むほうが重大「休むと迷惑」と我慢して出勤し、施設全体に感染が広がる
外国人職員へ

・上の10個は、日本の職場では常識とされていることです。教わっていなくても、そう扱われます
・知らなかったことは恥ではありません。今知れば大丈夫です
・迷ったら「これはやっていいですか」と先に聞いてください

日本人職員へ

・上の10個を、教えましたか。「常識だから」で省いていませんか
・これらは日本の職場文化であって、世界共通ではありません
・できていないのを見たら、まず教わっているかを確認してください。叱るのはそのあとです

② 困ったときの動き方

1 「分からない」と、その場で言う

あとで聞こうと思うと、忘れます。そして事故になります。作業を止めてよいです。 Tôi không hiểu. Xin hãy chỉ cho tôi.

2 どんな困りごとかを分ける

ひとくちに「困った」と言っても、行き先が違います。 言葉が分からない/やり方が分からない/これをやってよいか分からない/体調・生活のこと/人間関係のことの5つに分けます。

困りごとの種類どこへ、どうするか
言葉・やり方その場の先輩・リーダーへ。「紙に書いてください」と頼む。手順書やこの本を見る。やってみせてもらう
やってよいか分からないやる前にリーダーへ。特に:身体拘束・写真・薬・記録の書き換え。迷ったらやらないが正解
体調・生活・人間関係施設の相談担当へ。監理団体・登録支援機関へ。それでも解決しなければ外部の窓口

3 聞いた内容を、自分でメモする

同じことを3回聞くのは大丈夫ですが、メモがあれば1回で済みます。 日付とだれに聞いたかも書いてください。

4 解決しなかったら、次の人へ

先輩 → リーダー → 主任・管理者 → 監理団体・登録支援機関 → 外部の窓口。 順番に上げていってよいです。

言い出しにくいときの、言い方

こういうときこう言う
忙しそうで聞けない「1分だけ、いいですか」Cho tôi hỏi một phút được không ạ?
何度も聞いて申し訳ない「すみません、もう一度お願いします」Xin lỗi, xin nói lại một lần nữa ạ.
今できないと言いたい「今、〇〇をしています。10分後でもいいですか」Bây giờ tôi đang làm 〇〇. 10 phút nữa được không ạ?
ひとりでは無理「ひとりでは危ないです。手伝ってください」Một mình thì nguy hiểm. Xin hãy giúp tôi.
やってよいか確認したい「これは、やってもいいですか」Việc này tôi có được làm không ạ?

日本人職員へ:上の5つの言葉が出たら、それはいい兆候です。 「忙しいから後で」と言い続けると、次から言われなくなります。 「今はダメだけど、〇時に必ず聞くね」まで言ってください。時刻を言うのが大事です。

相談できるところ — 施設の中と、外

施設の中で解決しないことは、外に相談してよいことになっています。 まず、施設の中の相談先を、入職のときに埋めてもらってください。

施設の中(入職のときに、この欄を埋めてもらってください)

相談すること担当者の名前連絡の方法
日々の仕事のこと  
シフト・休みのこと  
体調・けが・病院  
生活・住まい・お金  
ハラスメント・人間関係  
夜間・休日の緊急連絡  

施設の外

窓口こんなときにことば
監理団体/登録支援機関仕事・生活・在留のこと全般。まずここ母語で相談できることが多い
外国人在留支援センター(FRESC)在留資格・生活・労働のワンストップ相談多言語
外国人労働者向け相談ダイヤル(厚生労働省)賃金・残業代・解雇・労災多言語
労働基準監督署賃金が払われない・違法な長時間労働・労災通訳の手配を依頼できる
法テラス多言語情報提供サービス法律のこと全般多言語
市町村の高齢者虐待の窓口虐待を見た・疑ったとき施設を通さず直接でよい
各都道府県の外国人相談窓口生活のこと・医療・こころの相談多言語

※ 連絡先の電話番号・受付時間は変わることがあります。施設で最新のものを調べ、母語の一覧にして配ってください。詰所と休憩室に掲示しておくのがいちばんです。

大事なこと:外部に相談したことを理由に、不利益な扱いをすることは違法です。
解雇する、シフトを減らす、帰国させると言う——これらはできません。相談する権利は守られています。 Việc bị đối xử bất lợi vì đã đi tư vấn bên ngoài là vi phạm pháp luật. Quyền được tư vấn của bạn được bảo vệ.

日本人職員・管理者へ

・外部の相談先を隠さないでください。教えることが、信頼につながります
・「うちで解決しよう」は、時に問題を大きくします
・相談されたことを本人の同意なく他の職員に話さない

外国人職員へ

・相談は「裏切り」ではありません。あなたの権利です
・まず監理団体・登録支援機関へ。それでも解決しなければ外部へ
・記録(日付・言われたこと・誰が)を残しておいてください

③ 報連相・申し送り・時間

なぜ日本の介護現場は、ここまで報告を求めるのか。理由は4つあります。

理由中身
人が交代するから1日に3回、担当が変わります。言わないと、次の人には何も残りません
記録が法的文書だから事故があったとき、記録が唯一の証拠になります(記録の節
小さな変化が命に関わるから「今日は食が細い」が肺炎の始まりということがあります
あなたを守るため報告してあれば、あなたひとりの責任にはなりません。報告しないと、あなたが背負います

報告するときの型(この順番で言う)

①誰が ②いつ ③どこで ④何が ⑤自分がやったこと ⑥お願いしたいこと

この6つを、この順番で言うだけです。順番が決まっていると、言うほうも聞くほうも楽になります。

「田中さんが、14時に、居室で、床に座っていました。2人で座らせて、看護師さんを呼びました。次にどうしたらいいか教えてください。」 Ông Tanaka, lúc 14 giờ, trong phòng, đang ngồi dưới sàn. Tôi đã đỡ dậy và gọi y tá. Xin cho tôi biết tiếp theo nên làm gì.

「悪い報告」ほど早く。これが日本の職場の鉄則です。 良い報告は遅れても困りませんが、悪い報告は遅れるほど大きくなります。 言いにくいことこそ、いちばん先に言ってください。

時間と申し送り

外国人職員へ

・申し送りは開始時刻ちょうどに始まります。5〜10分前に来ておく
・遅れるときは必ず電話。「連絡がない」がいちばん問題になります
・聞き取れなかったところは、その場で「もう一度」と言う
・大事なことは紙に書いてもらう。頼んでよいです
・休むときも必ず電話。メッセージだけで済ませない施設が多い

日本人職員へ

・申し送りの話す速度を落とす。それだけで伝わり方が変わります
・略語と方言を使わない。「バイタル」は通じても「ラウンド」「ケアマネ」「デイ」は通じないことがあります
・指示は具体的に、数字で。「たくさん飲ませて」→「200ml」/「あとで」→「10時までに」
・重要事項はホワイトボードか紙に書く。口頭だけにしない
・最後に「何か分からないところある?」と必ず聞く

よく使われる言い方言い換えの一例
「適当に」「〇〇の順番で」
「様子を見て」「30分後にもう一度見て、〇〇なら呼んで」
「気をつけて」「フットレストを外してから」
「ちゃんと」(具体的な動作を言う)

「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」は、何も指示していないのと同じです。

記録は、法的な文書です

おさえること中身
書いていないこと=やっていないこと実際にやっていても、記録になければ「やっていない」と判断されます。裁判でも監査でも同じです
保存されます介護記録は数年間保存され、監査・事故調査・裁判で見られます
あとから書き換えないこれは絶対にしてはいけません。間違えたら、二重線で消して、日付と名前を書いて直す。消しゴム・修正液・上書きは改ざんを疑われます
事実と推測を分ける見ていないことは「〜と思われる」ではなく、欄を分けて書く(第1章)
主観的な決めつけを書かない×「わがまま」「怠けている」「暴力的」 → ○「〇時、『帰りたい』と大声。10分後に落ち着かれた」
日本語が不安なとき短い文でよいです。長くきれいに書くより、事実が正確なほうが価値があります

記録の書き換えを指示されたら。「これは書かないで」「こう書き直して」と言われたときは、 従う前に別の人に相談してください。指示に従っても、書いた人の責任になります。 監理団体や外部の窓口に相談してよい場面です。 Nếu bị yêu cầu sửa hồ sơ, xin hãy hỏi ý kiến người khác trước khi làm.

個人情報とSNS — 仕事を失う人がいちばん多いところ

ここは、悪気なくやってしまう場所です。そして、結果がいちばん重い場所でもあります。

やってはいけないことなぜ
個人のスマホで利用者を撮る施設の機器以外は原則禁止。撮った時点で問題になります
SNS・母国の家族へ写真を送る利用者・他の職員が写っていれば、それだけで違反
施設名・制服が分かる写真を上げる本人が写っていなくても、施設が特定されます
利用者の名前・病気を外で話す電車・食堂・寮でも同じ。守秘義務違反
家族や友人に「今日こんな人がいて」と話す悪気がなくても違反です
記録や書類を持ち帰る・写真に撮る勉強のためでも禁止
亡くなった方のことを話す亡くなったあとも守秘義務は続きます
退職後に話す辞めたあとも守秘義務は続きます

結果は重いです。解雇、損害賠償、刑事罰、在留資格への影響まであり得ます。「知らなかった」では済みません。

迷ったら、撮らない・送らない・話さない。これだけ覚えてください。

Nếu phân vân: KHÔNG chụp, KHÔNG gửi, KHÔNG kể. Nghĩa vụ bảo mật vẫn tiếp tục sau khi nghỉ việc.

日本人職員・管理者へ:入職の初日に、具体例で教えてください。「個人情報に気をつけて」では伝わりません。 「制服が写った自撮りもダメ」「寮で利用者の話をするのもダメ」まで言う必要があります。

身体拘束にあたる11の行為

ここは、善意でやってしまうところです。知らないと、あなたが違反者になります。 次の11の行為は、原則すべて禁止とされています。

やむを得ず行うには、3つが「すべて」必要です。
切迫性せっぱくせい(命・体に危険がある) ②非代替性ひだいたいせい(ほかに方法がない) ③一時性いちじせい(一時的である)

加えて、チームでの検討・記録・ご家族への説明と同意が必要です。 ひとりの職員が判断してよいものではありません。

迷ったら、やる前にリーダーへ。

Nếu phân vân, hãy hỏi tổ trưởng TRƯỚC KHI làm.

虐待の5つの種類と、通報のしかた

種類中身
身体的虐待たたく・つねる・強くつかむ・無理やり動かす。身体拘束もここに含まれます
介護の放棄(ネグレクト)食事・水分・排泄・入浴を必要なだけ提供しない。長時間放置する
心理的虐待どなる・乱暴な言葉・呼び捨て・子ども扱い・無視・恥をかかせる
性的虐待同意なく性的な行為・言葉。不必要に裸にして放置することも含まれます
経済的虐待お金や物を勝手に使う・取り上げる

見たとき、どうするか

「虐待を受けたと思われる」高齢者を見つけたら、市町村に通報する義務があります。(高齢者虐待防止法)

あなたが調べる必要はありません。判断するのも、あなたではありません。 Chỉ cần "nghi ngờ" là có thể trình báo. Người trình báo được pháp luật bảo vệ, không bị sa thải hay đối xử bất lợi. Bạn không cần phải tự điều tra.

日本人職員へ:この節は、外国人職員だけのものではありません。 虐待の多くは、忙しさと孤立から起きます。 「つい強くつかんだ」「つい大きな声が出た」を、責める前に相談できる場にしてください。 それが起きない人員配置になっているかも、施設の責任です。

ご家族への対応

場面やること
呼び方施設で統一(「〇〇様」か「〇〇さん」)。下の名前・あだ名・ちゃん付けは使わない
電話①施設名と自分の名前を名乗る ②相手の名前を確認 ③メモを取る ④分からないことは「確認して折り返します」
答えられないことその場で答えない。「担当の者から連絡します」でよい。推測で答えない
事故・けがのこと必ずリーダー以上が対応します。発見者ひとりに背負わせない
謝罪「ご心配をおかけしております」は言ってよい。賠償の話は管理者が行う

日本人職員へ:外国人職員に家族対応を丸投げしないでください。 電話の日本語は現場の日本語よりずっと難しいです。 まず一緒に出る、次に横で聞く、という段階を踏んでください。

宗教・食習慣・服装

外国人職員へ

・必要な配慮は、遠慮せずに先に伝えてください。あとから言うほうが、お互い困ります
・礼拝の時間、食べられないもの、断食の時期、服装。入職のときに具体的に
・「できない」ではなく「こうすればできます」と提案の形にすると通りやすいです

日本人職員へ

・先に聞いてください。言い出しにくいものです
・豚肉・アルコール(調味料・消毒も)・ゼラチン。休憩室の食事にも配慮を
・礼拝は短時間です。休憩の取り方を工夫すれば両立できます
・ヒジャブと感染対策は両立できます(交換頻度・洗濯のルールを一緒に決める)
・断食の時期は、シフトを相談する

利用者・ご家族からの差別的な言動

起きることどう考え、どうするか
「外国人にはやってほしくない」と言われるひとりで我慢しない。その場でリーダーへ。担当を替えるかどうかは、施設が判断します
国や見た目のことを言われる認知症の症状として出ている場合と、そうでない場合があります。どちらでも記録に残して報告してください
体を触られる・性的な言動すぐに離れて、必ず報告。我慢する必要はまったくありません
暴力を受けたけががなくても報告。労災になる場合があります

職員を守るのは、施設の義務です。 利用者からのハラスメントについて、施設は対策を取る責任があります。「利用者だから仕方ない」は通りません。

ひとりで抱えないでください。記録を残してください。 Bảo vệ nhân viên là trách nhiệm của cơ sở. Đừng chịu đựng một mình. Hãy báo cáo và ghi lại.

④ 「わかりました」問題 — この章の中心

分からないのに、頷いてしまう。これは、事故の最大の入口です。

「わかりました」と言ったのに、できていなかった。 これは、うそをついたのではありません。その場で「分かりません」と言えなかったのです。

理由はいくつもあります。忙しそうだった。何度も聞くと迷惑だと思った。 分からないと言うと評価が下がると思った。どこが分からないのか、自分でも分からなかった。

これを本人の問題にすると、絶対に解決しません。

なぜ「わかりました」と言ってしまうのか

理由中身
聞き返すのが失礼だと思っている目上の人に聞き返すことを避ける文化圏があります
評価が下がると思っている「質問が多い=能力が低い」と考える職場を経験している場合があります
相手が忙しそう実際に忙しい。声をかけるタイミングが見つからない
半分は分かっている7割分かると「分かった」と感じます。残り3割に事故が潜みます
どこが分からないか分からない知らない言葉があると、文全体が分からなくなります
前に聞いたことがある「前も聞いたよね」と言われた経験があると、二度と聞きません
外国人職員へ — 3つだけ

①「分かりません」は、いつ言ってもいい言葉です。作業を止めてよいです

② どこが分からないかを言う。「全部」でもいいです。「〇〇という言葉が分かりません」ならもっといいです

③ 復唱する。「〇〇を、10時までに、2人でやる、でいいですか」——これが最強の方法です。間違いがその場で見つかります Hãy nhắc lại: "〇〇, trước 10 giờ, hai người làm — có đúng không ạ?"

日本人職員へ — 3つだけ

①「分かった?」と聞かない。誰でも「はい」と答えます。かわりに「今から何をする?」と聞く

②「前も言ったよね」を言わない。この一言で、その人は二度と質問しなくなります

③ やってみせる。言葉で3回説明するより、1回やって見せるほうが速いです。そしてやってもらって、見る

✕ 伝わらない確認

「分かった?」/「大丈夫?」/「できる?」/「質問ある?」

→ 全部「はい」と答えられます。何も確認できていません。

〇 伝わる確認

「今から何をするか、教えて」/「順番を言ってみて」/「何時までにやる?」/「ひとりでやる? 誰か呼ぶ?」

答えられなければ、伝わっていないと分かります。

この問題は、日本人どうしでも起きています。 新人が先輩に「分かりません」と言えないのは、外国人職員に限った話ではありません。 言語の問題として片づけると、本質を見失います。

教え方の4ステップと、面談の記録

 ステップ中身
1やって見せる説明せずに、まず1回やって見せる。言葉での説明は、このあと
2説明する短い文で。数字を入れる。専門用語は言い換える
3やってもらう横で見る。途中で口を出さない(危険なとき以外)
4よかった点を先に言うできた部分を言ってから、直す部分を1つだけ言う。3つ言うと全部忘れます

手順書は「絵」で作ってください。文章の手順書は、日本人の新人にも読まれません。 写真か図+短い文+ふりがな。この本の各章がその形になっています。そのまま真似して作れます。

面談・相談の記録

①日時 ②同席者 ③本人が話したこと(そのままの言葉で) ④施設として決めたこと ⑤いつまでに ⑥次の面談の日

「8/25 15:00〜15:30/同席:主任〇〇、通訳(監理団体△△)/本人『夜勤のとき、何をどの順番でやるか分からなくなる』/夜勤の手順を写真つきの1枚にして、9/5までに作る(担当:〇〇)/次回面談 9/10」

項目目安
頻度入職後3か月は月1回。その後は3か月に1回が目安
場所他の職員に聞こえない場所で。詰所の立ち話にしない
通訳込み入った話は母語で。監理団体・登録支援機関に依頼する
聞き方「困っていることはある?」→ 出ません。「先週、いちばん大変だったのはいつ?」と、具体的に聞く
扱い本人の同意なく、話した内容を他の職員に伝えない

面談で聞くとよい質問(そのまま使えます)

Tuần vừa rồi, lúc nào là vất vả nhất? / Có việc gì bạn đang làm mà chưa thực sự hiểu không?

⑤ 受け入れる側の20項目点検

職員を点検するのではありません。施設の体制を点検します。 年1回、管理者とリーダーで行うのが一例です。

□が15個未満なら、事故が起きたとき「教えていなかった」ことになります。

外国人職員が増える施設で起きる事故の多くは、本人の能力ではなく、受け入れ体制の不足から起きています。 この20項目は、職員を守ると同時に、施設を守ります。

定着のためのサイクルと、カンファレンスでの使い方

時期やること
入職前宗教・食習慣・住まい・通院の希望を聞く/連絡先一覧を母語で用意
初日身体拘束11項目/SNS・守秘義務/虐待通報/緊急連絡系統。この4つは初日に
1週間教育担当を1人決める。「誰に聞けばいいか」を明確にする
1か月1回目の面談。「先週いちばん大変だったのはいつ?」から始める
3か月夜勤に入る前に、写真つき手順書で確認。最初の夜勤は必ず2人
6か月ヒヤリハットを出せているか確認。出ていないのは危険なサイン
1年20項目を点検。本人にも「教わっていないこと」を聞く

カンファレンスで、この章を使うとき(30分の一例)

時間やること
5分困りごとの地図を全員で見る。「言えていない困りごと」があるかを考える
10分外国人職員に「教わっていないと思うこと」を聞く。責める場にしない
10分20項目から、□がついていないものを1つ選んで対策を決める
5分先月の対策の確認

「分かりません」と言える職員は、危険な職員ではありません。いちばん安全な職員です。

分からないまま黙って進む人が、事故を起こします。分からないと言える人は、事故の手前で止まれます。

その一言が出る空気を作るのは、日本人職員の仕事です。 そして、その一言を出す勇気は、外国人職員の仕事です。どちらか片方だけでは、できません。 Người dám nói "tôi không hiểu" không phải là nhân viên nguy hiểm — mà là nhân viên an toàn nhất.

この章のまとめ

  
いちばん危ないのは言えなかった困りごと。本人の努力ではなく、聞ける仕組みで解決する
知らないと違反になるのは身体拘束・写真とSNS・記録の書き換え。この3つは初日に教える
虐待を見たら疑いで通報してよい。通報者は法律で守られる。調べる必要はない
確認のしかたは「分かった?」ではなく「今から何をする?」
教える側の禁句は「前も言ったよね」。この一言で質問は止まります
点検するのは職員ではなく施設の体制(20項目

章末|用語対訳表

この章で使う言葉です。ふりがな・ベトナム語・英語・ひとことを並べています。 用語だけをまとめたページは 日本の介護現場の用語 対訳 にもあります。

日本語(ふりがな)Tiếng ViệtEnglishひとこと
報連相(ほうれんそう)Báo cáo – Liên lạc – Trao đổiReport, contact, consult報告・連絡・相談
申し送り(もうしおくり)Bàn giao caHandover時間ちょうどに始まる
指示(しじ)Chỉ thị / Hướng dẫnInstruction数字で出してもらう
復唱(ふくしょう)Nhắc lại để xác nhậnRepeat back最強の確認方法
記録(きろく)Hồ sơ / Ghi chépRecord法的文書です
改ざん(かいざん)Sửa đổi gian lận hồ sơFalsification絶対にしない
監査(かんさ)Thanh tra (kiểm tra của chính quyền)Audit行政が記録を見る
守秘義務(しゅひぎむ)Nghĩa vụ bảo mậtDuty of confidentiality退職後も続く
個人情報(こじんじょうほう)Thông tin cá nhânPersonal information名前・写真・病名
身体拘束(しんたいこうそく)Hạn chế vận động cơ thểPhysical restraint11項目・原則禁止
切迫性(せっぱくせい)Tính cấp báchImminence3要件の1つ
非代替性(ひだいたいせい)Không có phương án thay thếNo alternative3要件の1つ
一時性(いちじせい)Tính tạm thờiTemporary3要件の1つ
虐待(ぎゃくたい)Ngược đãiAbuse5つの種類がある
身体的虐待(しんたいてきぎゃくたい)Ngược đãi thể chấtPhysical abuse 
心理的虐待(しんりてきぎゃくたい)Ngược đãi tinh thầnPsychological abuse呼び捨て・子ども扱いも
ネグレクト(介護の放棄)Bỏ mặc, không chăm sócNeglect 
通報(つうほう)Trình báo cho chính quyềnReporting (to authorities)疑いでよい
市町村(しちょうそん)Chính quyền địa phươngMunicipality通報先
不利益な取扱い(ふりえきなとりあつかい)Đối xử bất lợiAdverse treatmentされません
ハラスメントQuấy rốiHarassment報告してよい
労災(ろうさい)Tai nạn lao độngWork-related injury暴力を受けたときも
就業規則(しゅうぎょうきそく)Nội quy lao độngWork rules読んでおく
監理団体(かんりだんたい)Nghiệp đoàn quản lýSupervising organization技能実習
登録支援機関(とうろくしえんきかん)Cơ quan hỗ trợ đăng kýRegistered support org.特定技能
在留資格(ざいりゅうしかく)Tư cách lưu trúStatus of residence 
労働基準監督署(ろうどうきじゅんかんとくしょ)Cục giám sát tiêu chuẩn lao độngLabour Standards Office賃金・残業
面談(めんだん)Buổi trao đổi cá nhânInterview / 1-on-1月1回
敬語(けいご)Kính ngữHonorific language利用者・家族へ
ヒヤリハットSuýt xảy ra tai nạnNear miss第8章
事故報告書(じこほうこくしょ)Báo cáo tai nạnIncident report第9章
手順書(てじゅんしょ)Bản hướng dẫn quy trìnhProcedure manual写真つきで
教育担当(きょういくたんとう)Người phụ trách đào tạoTrainer / Mentor1人決める
通訳(つうやく)Phiên dịchInterpreter面談で依頼できる
相談窓口(そうだんまどぐち)Quầy tư vấnConsultation desk母語で一覧を

章末|フレーズ集

この章のフレーズは、両側のものを載せています。 外国人職員が使う言い方だけでなく、日本人職員が使う言い方も、同じ表に入れてあります。

1. 分からないとき(いちばん大事)

日本語Tiếng Việt
分かりません。教えてください。Tôi không hiểu. Xin hãy chỉ cho tôi.
「〇〇」という言葉が分かりません。Tôi không hiểu từ "〇〇".
もう一度、ゆっくりお願いします。Xin nói lại chậm hơn một lần nữa ạ.
紙に書いてください。Xin viết ra giấy giúp tôi ạ.
やって見せてください。Xin làm mẫu cho tôi xem ạ.
復唱します。〇〇を、10時までに、2人で。合っていますか。Tôi nhắc lại: 〇〇, trước 10 giờ, hai người làm. Có đúng không ạ?

2. 確認する・断る・助けを求める

日本語Tiếng Việt
これは、やってもいいですか。Việc này tôi có được làm không ạ?
これは身体拘束になりますか。Việc này có phải là hạn chế vận động cơ thể không ạ?
今、〇〇をしています。10分後でもいいですか。Bây giờ tôi đang làm 〇〇. 10 phút nữa được không ạ?
ひとりでは危ないです。手伝ってください。Một mình thì nguy hiểm. Xin hãy giúp tôi.
体調が悪いので、今日は休ませてください。Tôi không khỏe, xin cho tôi nghỉ hôm nay ạ.
相談したいことがあります。時間をください。Tôi có việc muốn trao đổi. Xin cho tôi xin ít thời gian ạ.

3. 日本人職員が使う言い方(統一してください)

日本語Tiếng Việt
✕「分かった?」 → 〇「今から何をするか、教えて」Bạn hãy nói cho tôi biết bây giờ bạn sẽ làm gì.
✕「前も言ったよね」 → 〇「もう一度説明しますね」Tôi sẽ giải thích lại một lần nữa nhé.
✕「忙しいから後で」 → 〇「今はできないけど、〇時に必ず聞くね」Bây giờ tôi bận, nhưng đúng 〇 giờ tôi sẽ nghe bạn.
✕「ちゃんとやって」 → 〇「〇〇を、〇時までに、この順番で」 
「報告してくれて、ありがとう」Cảm ơn bạn đã báo cáo.
「分からないことは、いつ聞いてもいいよ」Có gì không hiểu, bạn cứ hỏi bất cứ lúc nào nhé.

4. 困ったことを伝える

日本語Tiếng Việt
利用者さんから、こう言われました。Người sử dụng dịch vụ đã nói với tôi như thế này.
つらいので、担当を替えてもらえますか。Tôi thấy khó chịu, có thể đổi người phụ trách được không ạ?
この記録の書き方が分かりません。Tôi không biết viết hồ sơ này thế nào.
お祈りの時間を、休憩に入れてもいいですか。Tôi có thể cầu nguyện trong giờ nghỉ được không ạ?

両方の職員へ:この4番の言葉が出る職場は、事故が少ない職場です。 出ない職場は、問題がないのではなく、見えていないだけです。

※ ベトナム語について 本章のベトナム語は、介護現場での使用を前提とした訳です。地域・世代により言い回しが異なる場合があります。実際の運用前に、介護現場を知るベトナム語話者による確認を必ず行ってください。

※ 法令・制度について 本章の法令・制度の記述は、一般的な説明です。詳細は最新の法令、および所属施設の規程を必ず確認してください。

この方は、どこに気をつける?

利用者さんの状態を選ぶと、注意すべきことがまとまって出ます。印刷して、カンファレンスの資料に使えます。

困りごとから調べる → 様式をダウンロード

根拠にした資料

個人の経験ではなく、公表されている資料と制度をもとに整理しています。本章で名前を挙げているのは、次のものです。
  • 高齢者虐待防止法(市町村への通報義務、通報者の保護)
  • 厚生労働省「外国人労働者向け相談ダイヤル」
  • 外国人在留支援センター(FRESC)
  • 労働基準監督署
  • 法テラス 多言語情報提供サービス
  • 市町村の高齢者虐待の窓口/各都道府県の外国人相談窓口
連絡先・受付時間は変わることがあります。最新のものを、施設でお確かめください。
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 施設によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 手順・回数・期間として挙げた数字は、すべて目安・一例です。 実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。 制度・基準は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。