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外国人職員

外国人職員がヒヤリハットを書かないのは、日本語力の問題ではない

外国人職員から、ヒヤリハットが上がってこない。
「日本語が書けないからだろう」——そう考えて、そこで止まってしまうことがあります。

先に、結論を書きます。書けない理由は7つあり、いちばん大きいのは「怒られると思っている」ことです。 これは、日本人職員が書かない理由と、まったく同じです。

日本語は、そこに上乗せされた負担です。
つまり、日本語の壁だけを下げても、書くようにはなりません。順番があります。

最終更新:2026年8月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 「日本語力の問題」にすると、そこで止まります
  2. 書けない理由は、7つあります
  3. いちばん大きいのは「怒られると思っている」
  4. 日本語の負担は、下げ方があります
  5. 施設が変えること(チェックリスト)
  6. まとめ

「日本語力の問題」にすると、そこで止まります

ヒヤリハットが0件、あるいは数件しかない。それは「起きていない」のではなく、「見えていない」ということです。 水面の下が空っぽの氷山は、ありません。

「0件」は、安全のしるしではありません。
見えていないものは、そのまま育って、いつか水面の上に出てきます。 "0 báo cáo" không có nghĩa là an toàn — mà là chúng ta không nhìn thấy.

そして「外国人職員からの提出が0」を見たとき、原因を日本語力に置いてしまうと、 打てる手は「日本語を勉強してもらう」しかなくなります。それでは、来月も0のままです。

実際に起きていることは、もう少し単純です。 出したら呼ばれて聞かれるかもしれない。自分のせいにされるかもしれない。出しても何も変わらない。 ——この3つは、日本人職員が書かないときの理由と同じものです。

日本語の壁を下げれば書く、というものではありません。

壁は確かにあります。ただし、それは上乗せの部分です。土台にあるのは、空気と体制のほうです。

外国人職員が書かないのは、日本語力の問題ではありません。
「怒られるかもしれない」「自分のせいにされるかもしれない」——これは日本人職員が書かない理由と、まったく同じです。 そこに日本語の負担が上乗せされているだけです。 Nhân viên nước ngoài không viết KHÔNG phải vì tiếng Nhật. Là vì sợ bị mắng — giống hệt nhân viên Nhật.

書けない理由は、7つあります

「意識が低いから書かない」のではありません。書けない理由が、必ずあります。 そして、7つのうち日本語の話は1つだけです。

書けない理由中で起きていること
① 怒られると思っている これがいちばん大きい理由です。出したら呼び出されて聞かれる、カンファレンスで名前が出る、評価に響く——そう思っていれば、出しません
② 時間がない 様式が長い。用紙を探すところから始まる。清書を求められる。勤務時間内に書く時間がない
③ 書き方が分からない 記入例がない。「こう書けばいい」という実物を見たことがない
④ 自分のミスだと思われたくない ヒヤリハットが「事故報告書」と同じ扱いになっている。ミスでないこと(床が濡れていた、など)も書いてよいと聞いていない
⑤ 出しても何も変わらない 2番目に大きい理由です。出した先がどうなったのか、返ってこない。変わった実感がない
⑥ 日本語で書けない 7つのうち、日本語の話はここだけです。漢字が書けない、文章にならない、と思って手が止まる
⑦ 前に出したとき、責められた 一度これをやると、その人は二度と出しません。理由を説明されることもないので、周りは気づきません

順番があります。⑥(日本語)だけを直しても、①と⑦が残っていれば、出てこないままになりやすいものです。 まず①と⑦。そのうえで⑥を下げる、という順で見てください。

いちばん大きいのは「怒られると思っている」

ここは、様式では変わりません。受け取る側の一言で決まる部分です。 リーダーがどう言うかで、その人が1年間に出す枚数が変わります。

✕ こう言われると、出なくなる

「なんで気づかなかったの」
「これ、あなたがやったの?」
「で、対策は?」
「こんなことまで書かなくていい」
「字が読めないよ」
「あとでちゃんと書き直して」
「前も言ったよね」

〇 こう言われると、また出す

「書いてくれて、ありがとう」
「気づいてくれて助かりました」
「これ、今日直しておきます」
「ほかにもあったら、また教えて」
「短くて大丈夫だよ」
「言いにくかったよね。言ってくれてよかった」

受け取る側の一言が、次の1件を決めます。「ありがとう」は、いちばん安い対策です。 Một câu "cảm ơn bạn đã viết" quyết định việc lần sau họ có viết nữa hay không.

書いてくれて、ありがとう。Cảm ơn bạn đã viết.

言いにくかったですよね。言ってくれてよかったです。Chắc bạn đã rất ngại nói. May mà bạn đã nói ra.

「なんで」と聞かない

受け取ったとき、つい「なんでそうなったの」と聞いてしまいます。 聞くのは「どこで」「何が」だけで足ります。「なんで」は、聞かれた側には理由の説明を求められているように届きます。

⑦は、取り返しがつきにくい理由です。
過去に責めてしまった心当たりがあるなら、チームで謝るという方法があります。それで戻ることがあります。
そして「前も言ったよね」を言わない——これをチームのルールにしてください。この一言で、その人は二度と出さなくなります。

個人名を、カンファレンスに出さない

集計を見るときは、種類と時間帯だけで足ります。誰が出したか、誰がやったかは、対策を決めるのに必要ありません。 知っても対策は変わらず、変わるのは「その人が次から出さなくなること」だけです。

日本語の負担は、下げ方があります

①と⑦に手を付けたうえで、⑥を下げます。ここは、やり方がはっきりしています。

下げ方中身
丸をつけるだけの様式 ひらがなで選択肢を並べ、丸をつけるだけにする。「どこで」「なにが」「どうした」「けがは」を選択式にすれば、文章を書かずに出せます
ひらがな・カタカナでよい 漢字は要りません。「12:20 しょくどう みそしるで 2かい むせた とめて せきをしてもらった」——これで受け付けます
短くていい 文章になっていなくてかまいません。いつ・どこで/何があった/どうした、の3行で終わりです
口で言ってもらう 本人が話し、聞いた職員が書く。これでまったく構いません。大事なのは情報が施設に届くことで、本人が字を書くことではありません
母語で書いてもらう 母語で書いて、あとで訳す方法もあります。翻訳は、監理団体や登録支援機関に相談できます
記入例を貼る 用紙のとなりに、記入例を貼る。これだけで書ける人が増えます

丸をつけるだけの様式なら、丸をつけるだけで出せます。ひらがなにしておけば、漢字が読めなくても書けます。 「ひとこと」の欄は空欄でかまいません。丸だけでも、集計はできます。 Mẫu này chỉ cần khoanh tròn. Không cần viết câu. Phần "một dòng" có thể để trống.

本人から言ってもらう言い方も、決めておく

「こう言っていい」と分かっていれば、言いやすくなります。この2つを、入職のときに伝えておく方法があります。

日本語がうまく書けません。丸をつける紙はありますか。 Tôi không viết tiếng Nhật giỏi. Có mẫu chỉ cần khoanh tròn không ạ?

口で言うので、書いてもらえますか。 Tôi nói bằng miệng, anh/chị viết giúp tôi được không ạ?

「これも書いていい」を、実物で見せる

何を書けばよいか分からない、というより、「これは書くほどのことではない」と判断されて消えていることがあります。 次のようなものが、書いてよいものです。

「9:00 申し送りが速くて 聞き取れなかった。もう一度聞けなかった。」
「10:00 指示の意味が 分からないまま やった。
「13:00 記録に 何を書けばいいか 分からなかった。
「15:00 この方の食形態が 分からなかった。食札を見て確認した。」
「16:00 ひとりで 3人を同時に 食事介助した。ペースが速くなった。」
「10:00 2人でやりたかったが、呼べなかった。ひとりでやった。」

これは、外国人職員だけの話ではありません。
新人も、他フロアから応援に来た職員も、久しぶりの夜勤の職員も、同じです。 「分からなかった」を書けることが、この施設の本当の強さになります。

体制のことを書くのは、文句ではありません。
「ひとりで3人を介助した」という紙がたまること——それだけが、人員配置を変える力になります。 口で言っただけでは残りません。 Viết về vấn đề nhân lực KHÔNG phải là than phiền. Đó là căn cứ duy nhất để thay đổi.

施設が変えること(チェックリスト)

そのまま点検に使える形にしました。点検するのは職員ではなく、施設の側です。 上から順に、①と⑦(空気)→ ⑥(日本語)→ ⑤(返す)の順に並べています。

① 怒られると思わせない

② 時間がない・③ 書き方が分からない

④ 自分のミスだと思われたくない

⑥ 日本語で書けない

⑤ 出しても何も変わらない

「まだできていないこと」を書くのが、大事です。全部を解決できないのは、当たり前です。 「時間がかかっています」と書いてあれば、人は待てます。何も言われないから、あきらめるのです。

出ているかどうかを、数えて見る

枚数だけを見ていると、分かりません。あわせて、この4つを数えてください。

数えるもの読み方
提出した人の人数枚数より大事です。特定の人だけが出していないか
外国人職員からの提出0なら、様式か空気に問題があります。まず丸をつける様式を試す
夜勤帯からの提出少なければ、書く時間がない可能性があります
その日のうちに直した件数これが多いほど、次も出ます

特定の人だけが出している状態は、枚数が多くても危険です。 その人だけが「うるさい人」になっていないか。出している人を守ってください。

ヒヤリハットは、職員を管理する道具ではありません。職員が施設を動かすための道具です。

「書いても無駄」と思わせた時点で、その施設は、いちばん大事な情報を失います。 Báo cáo suýt tai nạn không phải để quản lý nhân viên — mà là công cụ để nhân viên thay đổi cơ sở.

まとめ

丸をつけるだけの様式を、そのまま使えます

ひらがなの選択式ヒヤリハット様式(丸をつけるだけ・3行の型)を配布しています。印刷して、用紙のとなりに記入例といっしょに貼ってお使いください。項目は、施設で多いものに入れ替えてかまいません。

様式をダウンロード → 困りごとから調べる

根拠にした資料

個人の経験や、特定の施設の事例ではありません。当研究所が編集している実務マニュアルの、次の箇所をもとに整理しています。
  • 『介護事故防止 実務マニュアル』第8章 ヒヤリハット(「書けない理由は7つあります」/3行の型/丸をつけるだけの様式/集計と、結果の返し方)
  • 同 第10章 日本の介護現場で特に注意すること(「わかりました」問題/受け入れる側の20項目点検)全文公開しています
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。 施設によって、職員によって、うまくいくやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 また、ここに挙げたことを実施すれば必ず報告が出るようになる、というものでもありません。 様式や、事故報告・行政への報告の基準は、所属施設の規程および自治体の定めに従ってください。 制度・基準は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。