介護施設で原因のわからないあざが増えるとき、まず見る5つのこと
誰に聞いても心当たりがない。それでも、毎月あざが出る。
介護の現場では、めずらしいことではありません。
先に、はっきり書いておきます。原因は、たいてい分かりません。 探しても見つからないことのほうが多い。それが普通です。
ただし、見る場所には順番があります。 そして、原因が分からなくても、やっておくべきことがあります。
原因が分からないのは、あなたのせいではありません
高齢の方のあざには、ぶつけていなくてもできるものがあります。加齢によって皮ふと血管がもろくなり、 軽くさわっただけ、袖を通しただけで出血することがあります。老人性紫斑と呼ばれます。
血をさらさらにする薬やステロイドを使っている方は、さらに出やすくなります。 つまり、探しても「ぶつけた場所」が存在しないことがあるということです。
原因が分からないことを、分からないまま共有できるチームが、いちばん安全です。
無理に原因を決めてしまうより、「分からない」と書いて、みんなで見ているほうが、次の発見が早くなります。
ただし「分からない」で終わらせてよい、という意味ではありません。
分からないからこそ、記録に残して、部位べつに数える。それが唯一の手がかりになります(4章)。
まず見る5つのこと
あざを見つけたとき、いきなり「誰がやったか」を探さないでください。 見る順番は、この5つです。
| 見るところ | 何を確かめるか |
|---|---|
| ① 場所 | 体のどこか。左右どちらか。同じ場所にくり返していないか すね・ひじ・前うでは、ぶつけやすい場所です。逆に、わき・内もも・背中は自分ではぶつけにくい場所です |
| ② かたち | 丸い点が並んでいないか(指のあと)。帯状・線状ではないか(ベルト・柵) 形は、当たった物の形をしています。ここが最大の手がかりです |
| ③ 見つけた時刻 | 朝いちばんか、日中か。前回いつ見たか 朝の更衣で新しいあざなら、夜間にできた可能性があります |
| ④ その方の状態 | 薬(抗血栓薬・ステロイド)/やせ/むくみ/乾燥/麻痺/拘縮/かゆみ |
| ⑤ 環境と道具 | 車いす・ベッド柵・装具・ストッキング・トイレ・浴室。その部位に当たる物を、実際に手でなでて探す |
⑤がいちばん見つかります。目で見るのではなく、手でなでてください。 目では分からない小さな出っぱり、ネジの頭、樹脂の縁のバリが、指では分かります。
部位で、危険度が違います
同じあざでも、できた場所によって意味が変わります。 自分でぶつけられる場所か、そうでないかで分けて考えます。
赤の場所を、自分で判断しないでください。
「移乗のときに支えた場所だから」と分かっていても、必ず報告します。
これは疑うためではなく、報告した記録が、あとであなたを守るためです。
とくにわき・上うでの「丸い点が並んだあざ」は、指でつかんだ跡の形です。 移乗の方法を見直す合図でもあります。
原因が分からなくても、やっておくこと
ここがこの記事のいちばん大事なところです。原因が分からなくても、できることが3つあります。
① 見つけたその場で、記録する
あとで書こうとすると、必ず忘れます。大きさ・色・形・部位・時刻を、その場で残してください。
「右腕に内出血あり。原因不明。経過観察。」
これでは、1か月後に読んでも何も分かりません。大きさも形も部位の詳細もないので、比べられません。
「8/25 10:00 入浴時、右下腿前面に3×2cmの紫色のあざを発見。形は帯状。本人に痛みの訴えなし。
発生の瞬間は目撃していない。」
形と部位が書けているので、当たっている物を探せます。
② 「発見」と書く。「ぶつけた」と書かない
見ていないなら、「発見した」が事実です。「ぶつけたと思われる」は推測なので、 欄を分けて書くか、「〜の可能性がある。目撃はしていない」と明記します。
推測を事実として書くと、記録全体の信頼が落ちます。
そして、あとで別の原因が分かったときに、記録が矛盾します。
「分かりません」は、いい加減な記録ではなく、いちばん正確な記録です。
③ 部位べつに、数える
1件では何も分かりません。しかし1か月分を部位べつに数えると、はっきり見えます。
| 集計で多かった部位 | 疑うところ |
|---|---|
| すね・足首 | 車いすのフットサポート。移乗のたびに当たっていないか |
| ひじ・上うでの外側 | アームサポート。傾いて寄りかかっていないか |
| こし・仙骨 | ずり落ちによる摩擦。褥瘡の始まりの可能性もあります |
| 手の甲・前うで | ベッド柵をつかむ、皮ふの乾燥、抗血栓薬 |
| わき・上うでの内側 | 移乗で抱え上げている。方法と人数の見直しへ |
| 内もも・おしり | オムツ交換で足を広げすぎている。リフトのスリングのふち |
| ふくらはぎ・かかと | 弾性ストッキングのしわ、装具、ベッドでの引きずり |
数えることが、いちばん強い対策になります。
「すねが今月8件」という数字があれば、フットサポートのカバーを買う理由になります。
「なんとなく多い気がする」では、何も動きません。
「探しすぎない」ことも大切です
原因を突き止めようとするほど、職員どうしで疑い合うことになります。 そして、疑われると思った職員は、次から報告しなくなります。
報告が減ることのほうが、あざが増えることより危険です。
見つからなくなったのではなく、見えなくなっただけだからです。
だから、こう分けてください。
- その場で記録する
- 部位べつに数える
- 当たる物を手で探す
- 赤の部位は必ず報告
- 担当者を特定しようとする
- 「誰がやったの」と聞く
- 報告した人を責める
- 無理に原因を決めて書く
報告してくれた職員に、最初に言う言葉を決めておいてください。
「見つけてくれて、ありがとう」——これだけで、翌月の報告数が変わります。
Cảm ơn bạn đã phát hiện ra.
ご家族には、先に説明しておく
あざが出てから説明すると、どうしても言い訳に聞こえます。 入所のときに、あらかじめ伝えておくのがいちばん確実です。
「ご高齢の方は、皮ふと血管がもろくなっており、強くぶつけなくてもあざができることがあります。 私たちは毎日確認し、記録してまいりますが、原因が特定できないことも実際にございます。 その場合も隠さずご報告いたします。」
まとめ
- 原因は、たいてい分かりません。それが普通です
- 見る順番は 場所・かたち・時刻・その方の状態・環境と道具
- 環境と道具は、目で見ずに手でなでて探す
- わき・内もも・顔・首・背中・おしりは、推定できても必ず報告
- 記録は 大きさ・色・形・部位・時刻。「発見」と書く
- 1か月分を部位べつに数える。それが唯一の手がかりになります
- 探しすぎない。報告が減ることのほうが危険です
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」および関連通知
- 厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」
- 医療・介護ベッド安全普及協議会「医療・高齢者施設におけるベッドの安全な使い方」
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。