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むせない誤嚥(不顕性誤嚥)の見つけ方

むせていないから飲み込めている、とは限りません。
のどの感覚が鈍ると、入っても咳が出なくなります。本人も気づきません。職員も気づきません。
むせない誤嚥(不顕性誤嚥ふけんせいごえん)は、食事の場では見えません。数日あとの微熱や、なんとなく元気がない、という形で出てくることがあります。
介護職にできるのは、気づいて伝えるところまでです。診断も、食形態を変える判断も、介護職の仕事ではありません。

最終更新:2026年8月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. むせないから安全、ではありません
  2. サインは、食事の場の外に出てきます
  3. 食後に「あー」と言ってもらう
  4. 気づいたことを、どう残して、どう伝えるか
  5. 判断するのは、介護職ではありません
  6. まとめ

むせないから安全、ではありません

まず、前提をひっくり返しておきます。むせるのは、体が異物を出そうとしている正常な反応です。 むせている方は、少なくとも「入ってきたもの」に体が反応できています。

本当に注意が要るのは、むせないのに入っている状態(不顕性誤嚥)と、 咳ができない状態(窒息)の2つです。この記事は、前者を見つけるための記事です。

加齢や脳の病気でのどの感覚が鈍ると、異物が入っても咳が出なくなります。 そして数日後、誤嚥性肺炎ごえんせいはいえんとして現れます。 高齢の方の肺炎の多くが、これです。夜、寝ている間に、自分の唾液で起きていることもあります。

食事の場で何も起きなかったことは、安全だった証明にはなりません。

見えなかっただけかもしれない、という前提で食後を見ます。

むせている方への対応と、咳ができない方への対応は正反対になります。 見分けと手順は別の記事にまとめています。むせが増えたとき、どこから考えるかもあわせてご覧ください。

咳は、体の正常な反応です。いちばん危ないのは、咳ができないとき、むせずに入っているときです。 Ho là phản xạ bình thường của cơ thể. Nguy hiểm nhất là khi KHÔNG ho được, hoặc sặc mà không ho.

サインは、食事の場の外に出てきます

不顕性誤嚥は、むせという分かりやすい合図を出しません。 かわりに、食後の声、食事の時間、痰、熱、元気さといった、地味なところに出ます。 ひとつずつは「気のせい」で流せてしまうものばかりです。

サインどう見えるか
食後の声がかすれる いちばん分かりやすいサインです。食後に「あー」と言ってもらう。ゴロゴロ・ガラガラした声(湿性嗄声しっせいさせい)なら、のどに残っています
食事の時間が延びた 30分で終わっていた方が、45分かかるようになった(時間はあくまで一例です)
食べる量が減った 「食欲がない」ではなく、つらいから食べないのかもしれません
痰が増えた・色がついた 黄色・緑・粘りが強い
微熱が続く 37℃台が続くだけのこともあります
なんとなく元気がない 高齢の方の肺炎は、熱が出ないことがあります。元気がない・食べない・ぼんやりする、だけのことも
体重が減ってきた 月単位で見ます。1か月で2kg以上減ったら報告、というのが目安の一例です
呼吸が速い・肩で息をする すぐ看護師へ。ここは様子を見る場面ではありません

熱が出ていないことを、安心の材料にしないでください。
高齢の方の肺炎は、熱が出ないことがあります。「食べない」「ぼんやりしている」だけのことも珍しくありません。 いつもと違うと思ったら、体温が正常でも伝えてください。

この表の使い方は、ひとつずつ判定することではありません。 2つ3つが同じ方に重なってきたときに、看護師へ伝える材料として使います。 「気のせいかもしれませんが」と前置きしてかまいません。伝わることのほうが大事です。

食後に「あー」と言ってもらう

現場でいますぐできて、いちばん割に合う確認がこれです。3秒で終わります。 のどに残っているかどうかが、声の質で分かります。

以下は手順の一例です。施設の決まりや、その方の状態によって変わります。 取り入れる前に、看護師・リーダーに確認してください。

毎回の習慣にしてしまうのが、いちばん続きます。 思い出したときだけやると、比べる材料になりません。「いつものあの方の声」を知っていることが、変化に気づく土台になります。

食後に「あー」と言ってみてください。 Sau khi ăn, xin ông/bà nói "a—" giúp tôi. (Để kiểm tra giọng có bị khàn ướt không.)

姿勢がそろっていないと、確認の意味が薄れます

同じ方でも、日によって姿勢が違えば、のどの条件も変わります。 角度の数字それ自体に正解はありません。その日の担当者の感覚で角度が変わることのほうが問題です。

とくに見てほしいのは、あごです。倒すと頭は後ろに落ちます。 あごが上がると、口からのどまでが一直線になります。 枕やクッションで後頭部と首の後ろを支え、軽くあごを引く。 あごと胸骨の間に指3〜4本分のすき間、というのが目安の一例です。

✕ 立ったまま、上から介助する

利用者さんは、あなたの顔を見ようとしてあごを上げます。 そこにスプーンが上から入ります。枕をどれだけ工夫しても、これでは打ち消されます。

〇 座って、目線を同じか低く

あごが自然に下がります。スプーンは下から水平に運びます。 食べる速さも、相手のペースに合いやすくなります。

就寝前の口腔ケアは、省かないでください。 誤嚥そのものをゼロにはできませんが、入るものがきれいなら肺炎になりにくいと言われます。 夜間、寝ている間の唾液の誤嚥は、むせとして表に出ないぶん、ここが効いてきます。 Vệ sinh răng miệng là biện pháp hiệu quả nhất để phòng viêm phổi do sặc. Đặc biệt là trước khi đi ngủ.

気づいたことを、どう残して、どう伝えるか

ここが、介護職の仕事の中心です。あなたが書かないと、誰も結びつけられません。 数日後に熱が出たとき、「そういえばあの日、声がゴロゴロしていた」を記録から取り出せるかどうかです。

✕ よくない記録

「昼食時、むせあり。全量摂取。」

何を食べたときか、何回か、そのあとどうなったかが分かりません。 これでは、あとから見直す根拠になりません。

〇 よい記録

「12:20 昼食中、みそ汁(とろみなし)を一口飲んだ直後に2回むせる。咳あり、発声あり、顔色変化なし。 中断し前傾させ、1分で軽快。直後の発声に湿性嗄声あり、再嚥下で改善。摂取7割。 12:40 看護師〇〇へ報告。」

むせない誤嚥の場合は、むせがないぶん、書く材料が「声」と「様子」しかありません。 だからこそ、食後の声の状態を、その日のうちに一行だけでも残しておく価値があります。

食後の声がゴロゴロしています。——看護師への報告は、これで十分に成立します。 原因を言い当てる必要はありません。 Sau khi ăn, giọng ông/bà nghe lọc xọc.

むせたあと・気になったあとに見ること

以下は元資料にある観察の目安です。体温を測る回数も日数も、実際には施設の規程と看護師の指示によります。

いつ見ること出たらどうする
直後〜数時間呼吸の速さ・苦しそうか・顔色・唇の色・声苦しそうならすぐ受診の相談へ
当日〜3日間体温(1日2回以上が目安)・痰の量と色・食欲・元気さ37.5℃以上/痰が増えた → 看護師へ
3日〜1週間微熱が続く・食べない・ぼんやりする・体重熱がなくても、受診の検討を相談

月に1回、数える

1件では何も分かりません。1か月ぶんを並べると、見えることがあります。 日付をそろえておくと、あとから結びつけられます。

むせが0件の月は、危険なサインです。 記録されていないだけ、ということがあります。「0回」と書く習慣ができているか、確認してください。

そして発熱者が増えているのに、むせの記録が少ないとき。 むせない誤嚥が起きている可能性があります。口腔ケアの実施率、とくに就寝前が省略されていないかを見てください。

記録が続かない現場では、まず短く書けるようにするのが先です。 ヒヤリハットは3行でいいもあわせてどうぞ。

判断するのは、介護職ではありません

ここは、はっきり線を引いておきます。 むせない誤嚥に気づくのは介護職ですが、それが何であるかを決めるのは介護職ではありません。

〇 介護職ができること

食事の介助(決められた食形態で)/姿勢を整える/決められた濃さでとろみをつける/口腔ケア/ むせ・様子の観察と記録・報告/救命処置・119番通報・心肺蘇生・AED/ 研修を受け、認定された場合のみ:吸引

✕ 介護職ができないこと

食形態を変える判断(刻む・ミキサーにかける)/とろみの濃さを自分で変える/ 飲み込みの検査・評価/研修を受けていない吸引/経管栄養の実施(研修と認定が必要)/ 「食べられそうだから」と食事を戻す判断/薬を粉にする判断

気づいたことを報告するのが、あなたの仕事です。

判断するのは、医師・歯科医師・看護師・言語聴覚士・管理栄養士です。

「食べにくそうだから刻んであげよう」は、してはいけません。 善意ですが、きざみ食は口の中でまとまらず、かえって誤嚥しやすくなることがあります。

気づいたら、そのまま報告してください。 「〇〇さん、今日は3回むせました。飲み込むのに時間がかかっています」——これが、いちばん役に立つ行動です。 Đừng tự ý thay đổi dạng thức ăn. Hãy báo cáo những gì bạn quan sát được.

吸引についても同じです。行えるのは看護職員と、喀痰吸引等研修を修了して認定を受けた介護職員(かつ、事業所が登録を受けていること)に限られ、 認められた範囲だけです。「緊急だから」でもできません。 掃除機で吸うことは、絶対にしてはいけません。

自分が何をできるのか、今日はっきりさせておいてください。 研修を受けているか。認定されている部位はどこか。分からなければリーダーに聞いてください。 いざというときに迷う時間が、いちばん危険です。

まとめ

この方は、どこに気をつける?

利用者さんの状態を選ぶと、誤嚥について注意すべきことがまとまって出ます。印刷して、カンファレンスの資料に使えます。

誤嚥のリスクを調べる → 様式をダウンロード

根拠にした資料

個人の経験ではなく、公表されている資料をもとに整理しています。
  • 高齢者支援実務研究所「介護事故防止 実務マニュアル」第4章 誤嚥
  • 高齢者支援実務研究所「介護事故防止 実務マニュアル」巻末付録A 食事の姿勢
  • 喀痰吸引等の実施できる範囲は、最新の法令・通知、研修修了と認定の有無、事業所の登録状況、および所属施設の規程によります。必ずご確認ください
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 この記事は、誤嚥や肺炎を診断・治療するためのものではありません。 介護職にできるのは、気づいたことを記録し、報告するところまでです。 食形態・とろみの濃さ・姿勢の角度・受診の要否は、医師・歯科医師・看護師・言語聴覚士・管理栄養士が判断します。 本文中の角度・時間・回数・温度は、いずれも目安の一例であり、施設によって、利用者さんによって変わります。 呼吸が苦しそう、顔色や唇の色が悪い、発熱が続く、食べられないといったときは、すぐに看護師・医師にご相談ください。 実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。制度・基準は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。